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「冠を持つ神の手」ヴァイル編感想

主人公の運命(良くも悪くも)。いや、腐れ縁と言うべきか。どちらにせよ、切っても切れない縁で繋がっているのは間違いない。

 

  傍若無人、かと思えば好きな人には強く出られない弱さが垣間見えたり、子供っぽい性格かと思えば大人顔負けの冷徹さを持ち合わせていたりと、性格のアンバランスさが特徴的なキャラクターだと思います。未分化ゆえかな。

 

  初見時は正直印象あまり良くなかったです。なんせ初見プレイの私は「村大好き! 王になんて絶対なりたくないし王城嫌い! こんなとこ早く出て行きたい!」状態でしたから。だから攻略情報未見でヴァイルの地雷踏みまくりでした。

 

  そんな状態ですから、妙に親しげな…馴れ馴れしい…ヴァイルの態度がちょっとイラついたんですよね。こちらが気を遣って「城もそんなに悪くないかな」とか言えば言ったで見透かして好感度下げてくるし…。貴族特有? の鼻につく感じとか、ズバズバ物を言う感じとかもけっこう苦手で。

 

  でもそんな印象は友情&愛情ルートをクリアするごとに塗り替えられていきました。

 

  かもかてのキャラEDの最初はヴァイルの友情EDだったかな。公式でも一番簡単なエンドと書かれていたので、まずこれを狙いに行って、あっさり取れたという感じです。

 

  最初はヴァイルがなんで主人公にこんなに好意的なのかわからなくって、ちょっと怖くて苦手意識を抱いてたんですけど、彼の過去とかを知るとそれも腑に落ちました。

 

  仲良くなると彼は雨の降る屋上でぽつりぽつりと彼の両親のことを話してくれるのですが、「おまっ…普段あんななのにそんなディープな過去を抱えていたのか…」と、びっくりしたのを覚えています。BGMとか普段とのギャップも相まって、すごくヴァイルが弱弱しく見えるんですよね。衝撃でした。外伝(まだ最後まで読んでいませんが)を読むともっと彼の心情が理解できると思う。

 

  さてヴァイル愛情ですが、彼の愛情を得るには「城にずっといること(=ヴァイルとずっと一緒にいること)」をアピールしないといけないのがこのルートの難しさじゃないかなぁと。ただ単にヴァイルすきすきーって言ってるだけじゃだめなんですよね。あとヴァイルは嘘に敏感な子なので嘘つくのもだめ。ヴァイルは一見能天気に見えて、人の本心とか嘘とかすごく良く見抜きます。父親の事を話すときも、「たぶん俺のことを見ていなかった」みたいなことを言ってて、それが実際にどうであったかはさておき、人の気持ちに不安を感じやすいというか、好きな人にはめちゃくちゃ情緒不安定になっちゃうんだなぁという印象を抱きました。

 

  友情ルートでも垣間見えるヴァイルのその気質は愛情ルートで炸裂します。湖イベントで約束をしないと愛情EDは迎えられないし(なんなら憎悪EDのフラグでさえある)、約束しても他のキャラの印愛の方が高かったり、ヴァイルへの印愛が足りなかったりすると約束を破棄されます。情緒不安定。

 

  主人公の気持ちに不安を感じると、「それでも信じる」とか「主人公に対して怒る」とかでもなく、「ごめんやっぱアレなし。嘘ぴょん」みたいな感じで引こうとするのが、もう期待して傷つきたくない気持ちの表れなのかなと思ってなんとも切ないです。

 

  まぁ途中でヴァイルを不安にさせることなく、「私はヴァイルが好き!」って真っ直ぐ愛を伝えていればあっさりと愛情ルートに突入できます。個人的に好きなのは言わずもがな湖イベントで「約束する」を選んだ後と、舞踏会でダンスするシーンと、愛情EDで二人で空を見上げるシーン。

 

  空を見上げるシーンで聞ける、寵愛者は神によって空に召し上げられるという逸話がジーンときました。つまり愛情EDの二人は死ぬまでずっと一緒で、死んでからもずっと一緒なんですよね。そう考えると、まさに運命の二人と言うか、印持ちが二人現れてその二人が結ばれるって、なんてドラマティックな展開なんだろうと。収まるべきところにすべてが収まったという感じで、リリアノ陛下がニヤリするのも納得。

 

  さて翻って憎悪EDですが、正攻法でじわじわ好愛を下げていくパターンと、途中まで愛情ルートで、ヴァイルの地雷を踏み抜いて反転憎悪させる方法があります。憎悪ルートのヴァイルマジ怖いし、マジで徹底的に嫌な奴です。いとこのタナッセくんの憎み方も相当腹立ちましたが、ヴァイル憎悪EDを迎えるとタナッセの憎み方なんて可愛いもんに思えてきます。タナッセの憎み方が柱の陰からごみを投げつける感じだとしたら、ヴァイルの憎み方は大股で近寄ってきて笑顔で刺してくる感じです。嫌いな人は徹底的につぶす。容赦しない。さすがお世話係の名前を9年経っても覚えない男は違います。

 

  ただ、個人的にはヴァイル憎悪EDは大好きです。愛情EDも好きですが、愛情EDのヴァイルは本当の意味で主人公と向き合っては無い感じがするんですよね。主人公よりも「ずっと一緒にいてくれる人」に執着してる気がするからかな。主人公が好きだからずっと一緒にいて欲しい、じゃなくてずっと一緒にいてくれるから主人公が好き、みたいな。逆だろーっていう。彼の過去を考えると致し方ないかなとは思うのですが、主人公をちょっと都合よく利用しすぎじゃないかなーとも思う。

 

  憎悪EDで「お前と俺一緒になればランテ家的にはめっちゃ収まりがいいんだよね、まぁ絶対ごめんだけど(意訳)」みたいなことを聞かされた身からすると、そういう血筋的な意味も含めて、主人公がヴァイルの都合の良いように利用されまくっているように感じてしまって、ちょっと釈然としない。

 

  その点憎悪EDは気持ちいいくらい主人公を見てて、「お前、俺が思ってたんと違うわ」といいつつすっぱりと「お前嫌い!」って言ってくれますからね。最後の決闘もかっこいいしね。印持ち二人の最終決戦って…胸熱ここに極まれり。

 

  憎悪EDを遊んでるときは心の底からヴァイル嫌い! ってなるんですが、最終決戦で勝って、ヴァイルが泣き崩れるところを見るとさすがに同情心が湧いてきます。ヴァイルからしたら、印持ちであるがゆえに大好きな父親についていけず見送らなくちゃいけなくて、でも逃げるわけにもいかないし父親との約束もあるしその立場を仕方なく受け入れていて、でも同時に少なからず未来の王としてのプライドもあって。それなのにその座をぽっと出の主人公が奪って行ったんだもんなぁ。そりゃ泣きたくもなるわ。非常に脆いバランスの上に成り立っているヴァイルの精神が文字通り崩れ去った瞬間ですね。ここまで徹底的にヴァイルを叩きのめす主人公、さすがにあっぱれと言わざるを得ない。

 

  殺害EDはいろいろな殺し方があるんですけど回収したのは愛情ルートで直前反転憎悪→突き落とす。これはホントに主人公こわい、の一言に尽きます。「思いのほかあっけなく落ちた」って……。

 

  推しを殺せるゲーム、それが「かもかて」だ。